掲載日 2025/00/00

国際政治経済学部 国際コミュニケーション学科
現代社会をよりよく生きるためのコミュニケーションのあり方を探求

田崎教授からの
Message

国際政治経済学部 国際コミュニケーション学科 教授
田崎 勝也

「どうしたら人とうまくやっていけるだろうか」― 老若男女問わず、誰もが一度は考えたことのある疑問だと思います。本ゼミナール(ゼミ)のテーマは「対人コミュニケーション」。コミュニケーション理論や心理学に学びつつ、私たちにとって尽きることのない悩みである人間関係に関する諸問題について考えていきます。

Q.ゼミの研究内容について教えてください。

近年のグローバル化を背景に、日本においても西洋型のコミュニケーション術が求められるようになりました。自己を効果的にPRしなければならない社会状況が増えた一方、「コミュ障」や「KY」などの言葉が飛び交い、個性や多様性を認める包摂的な社会から退行するような動きも見られます。さらにSNSの台頭により承認欲求は強まり、つながっているはずなのに孤独を感じる「みんなぼっち」現象が顕在化するなど、ますます人間関係を取り巻く状況は混迷を極めていると感じます。この現代社会をよりよく生きるためには、どのようなコミュニケーション能力を身に付ければ良いのか。また、社会は私たちにどのような対人関係力を期待しているのか。本ゼミはこうした問いに対して何らかの解を導くことを目標としています。

ゼミ活動の眼目は、「Critical Incidents」と呼ばれる事例の研究です。学生がこれまでに経験したり見聞きしたりした対人関係のトラブルやコミュニケーションの諸問題をシェアし、考え得る原因やこれまでに勉強したコミュニケーション理論との関連性、主たる解決策などを議論します。題材は恋愛からアルバイトやサークル、留学先での体験など幅広く、実にリアルで、毎回活発なディスカッションが展開されています。最終的には事例集として印刷冊子にまとめます。

そして、もう一つの柱が卒業論文に向けた個人研究です。3年次の前期は輪読を通じて対人コミュニケーションに関する基礎的な知識を身に付けながら、各自関心のあるテーマを見つけ出します。学生が多様な事象に興味を持ち、視野を広げるきっかけになるよう、たとえば自閉症と方言の関連性、リモートワーク、ルッキズム、スマートフォンが与える影響など、幅広いテーマを選定しています。

Q.このゼミならではの特色やどのような学びを重視しているか教えてください。

国際政治経済学部のゼミの中でも、国際間の問題や外国人との異文化コミュニケーションにフォーカスせず、国内の対人関係やコミュニケーションに関する問題を取り上げているのが本ゼミの特徴だと思います。異なる文化的背景を持つ人とのコミュニケーションにおいては、自分自身がどんな文化や価値観を持っているのか、しっかり把握していることが重要です。しかし、実際にはどうでしょうか。対人関係のルールやマナーなど、なんとなく知っていて、その通りに行動しているけれど、それがどういう価値観に基づいて出来上がっているのかは意外と知らないのではないでしょうか。そこで、まず日本人の行動様式やコミュニケーション行動を確認し、自分たちの立ち位置を見定めることに焦点をおいています。結局は、それが異文化コミュニケーションにつながっていくと考えます。

残念ながら、人間関係の問題には絶対的な解決策はありません。そのため、経験値を積んで、「こういうときにはこんな対応がとれる」という引き出しをたくさん作ることが大事です。とは言え、一人一人の経験はごく限られているので、同年代の友人が抱えている問題や体験談を聞いたり、それについて議論を交わしたりすることは、非常に有益だと考えています。

また、個人研究においては、思考力をどれだけ高められるかという点を重視しています。学生には、輪読に伴って毎週レポート課題を出しますが、最初はテキストの内容をさらうだけのようなレポートもあります。良い評価がつかないことに悩む学生の姿も見られますが、繰り返す中で何が足りないのか気付きを得て、皆自分の考えをしっかり構築できるようになっていきます。

Q.学生にどのようなことを身に付けてほしいでしょうか。

学生には、理論やエビデンスに裏付けられたコミュニケーション論を身に付けてほしいと願っています。社会のさまざまな場面でコミュニケーション能力の重要性が叫ばれ、ネット上には根拠不明なコミュニケーション論があふれていますが、大学でコミュニケーション学に専門的に取り組むからには、それらと一線を画した理論的な主義主張ができるようになることが求められます。研究活動を通じて、データの信頼性や解釈の妥当性を評価する知見や、統計学、データサイエンスの知識も深めていってほしいと思います。

若い世代の皆さんは他者の目に敏感で、人間関係に相当なエネルギーを割いていると感じますし、それぞれにいろいろな悩みを持っていることと思います。今後どの分野に進んでも、さまざまな人との関わり合いがあり、どこにでも人間関係の問題は存在します。それに一喜一憂せずに、「この状況はあの理論で説明できるな」とか、「あのときゼミで話したことが生きそうだな」という風に、いま何が起きているのかを冷静に考えられる余裕を持つことは、生きていくうえで大きな力になります。人間関係の諸問題に興味関心のある人は、ぜひ一緒に学びましょう。

学生からの
Message

国際政治経済学部 国際コミュニケーション学科 4年
東京・東京学芸大学附属国際中等教育学校出身
乙藤 かや乃

私は10歳から15歳の5年間アメリカで暮らし、異なる文化的背景を持つ人とのコミュニケーションに強い関心を持つようになりました。先生や他の学生と対話しながら学べる少人数の授業に加え、専門科目を英語で学ぶGlobal Studies Program(GSP)を通じて、国際的な視点や実践的な英語力を身に付けられることに魅力を感じ、国際政治経済学部 国際コミュニケーション学科を志望しました。

田崎ゼミを選んだのは、国籍などの属性によるバイアスにとらわれずに誤解のないコミュニケーションが実践できる力を養い、調和の取れた社会の構築に貢献したいと考えたからです。特に心を引かれたのが、「Critical Incidents」を活用した学びで、自分自身や他のゼミ生の実体験をもとに、コミュニケーションのズレや誤解を伝える側と受け取る側の両方の視点から考察できるのがこのゼミの面白さだと思います。メンバーは相手の立場や思考を立ち止まって考えることができる人が多く、互いを尊重し合いながら、安心して意見を出し合える環境です。日常の中で感じた小さな違和感に注目し、「なぜ起きたのか」「どうすれば防げたか」を熟考してディスカッションすることは、日々のコミュニケーションを見直す契機になり、自分自身の思い込みや偏見に気付かされることが多々あります。その中で、視野が大きく広がり、多角的なものの見方ができるようになったことが一番の収穫です。私は思ったことをすぐに口に出してしまうタイプでしたが、相手の立場や受け取り方を考えてから発言する姿勢を身に付けることができました。私にとってゼミは前向きな意見交換を楽しみながら、成長できる場だと思っています。
一方で、毎週レポート課題が課されますが、最初はどのように書けば良いかわからず苦労しました。内容をより深く理解できるように、自分の経験や日常生活とつなぎ合わせてテキストを読み込むことを心掛けて、思考力が付いたと思いますし、継続するうちに自分の考えを論理的に整理し、言語化できるようになったと実感しています。また、統計ソフトのSPSSを用いた量的研究にも取り組んでおり、データの見方や分析方法を学び、物事を実証的・論理的に考える力が培われたことも大きな糧になると思います。

私自身の研究テーマは「AI翻訳とローカライゼーション」で、人間とAIのコミュニケーションについても学びを深めていくことが今後の目標です。日本のアニメに興味があるアメリカの友人たちは、アニメをテレビ等で視聴できる機会が少ないと残念に感じており、公式サービスの供給が迅速になれば海外の視聴者が増え、さらに日本の経済が発展するのではないかと考えたことがきっかけで、AI翻訳の活用に興味を持ちました。AIが言語や文化的な背景をどうとらえ、「伝わる表現」を実現しているのか研究していきたいと思います。そして卒業後は、日本の技術や文化を守りながら、その魅力を正しく世界に伝える仕事に携わりたいと考えています。ゼミで得た柔軟な視点や伝える力を生かし、グローバルな環境で文化や価値観の違いを乗り越えて、円滑なコミュニケーションが築ける人材を目指します。

国際政治経済学部
国際コミュニケーション学科

青山学院大学の国際政治経済学部は国際社会への貢献をそのミッションとし、国際系学部の草分けとして創設されました。各学科の学びを深めるだけでなく、有機的に3学科の学びを統合することもできます。グローバルレベルの課題への理解を深め、エビデンスにもとづいて議論・討論するスキルを養成します。世界の多様な人々と協働し、新たな価値を創造する実践力を育みます。
国際コミュニケーション学科では、激変する国際社会において政治学的・経済学的な視点からだけでは扱いきれない国際事象を学問領域として学修・研究します。異なる文化への理解と他者との共存について考え、国際社会が抱える諸問題の解決に貢献できる人材を育成します。卒業生は国際渉外・広報、各種海外協力事業団、通訳・翻訳、マスコミ業界などさまざまなフィールドで活躍しています。

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