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大学から始めたラクロスで日本代表に。考える力と組織力を学ぶ

掲載日 2025/00/00
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<2024年度 学友会表彰(体育会表彰)最優秀選手受賞>
理工学部 物理科学科 3年
織田 温子
神奈川県立川和高等学校 出身

OVERTURE

青山学院大学体育会ラクロス部(女子)で活躍する織田温子さんは、2025年1月に行われたラクロス大陸予選女子日本代表メンバーに選ばれ、決勝戦などで得点を挙げて優勝に貢献しました。日本一を目指す部活動、代表チームでの経験、勉学との両立について語ります。

ゲームキャプテンとして、「学生日本一」を目指してシーズンを始動

青山学院大学には、広くてきれいな相模原キャンパスを見て、楽しい学生生活を送れそうだと感じて進学しました。身の回りの現象を物理で解き明かせることに魅力を感じ、理工学部物理科学科への進学を決めました。大学では体育会で本格的にスポーツに取り組みたいと思い、小学校から高校まで続けていたバスケットボールを続けることも考えていましたが、姉が大学からラクロスを始めたことでラクロスにも関心を持つようになりました。そこで、ラクロス部の見学にも行ってみたところ、先輩方の温かい雰囲気や「学生日本一」を目指す姿勢に心を動かされ、最終的にラクロス部への入部を決めました。

青山学院大学体育会ラクロス部(女子)は、関東学生リーグの1部に所属し、部員は74名で土日を含めて週5日活動しています。7月から1月にかけて12チームを2ブロックに分けて行われる総当たりのリーグ戦が開催されます。現在は新シーズンに向けて、パスやキャッチといった基礎練習に加え、試合の戦略も練りながら実践形式の練習も増やしているところです。

今シーズンは、ゲームキャプテンとしてチーム戦術面やスキル向上を統括する役割を担っています。学生日本一という目標に向かって、特に力を入れている点は「ブレイク」を強みとすることです。ブレイクとは、相手のボールを奪った直後に相手が守備の体制を整える前に一気に攻め込む動きで、「速攻」とも言い換えられます。

青学は、体格や経験者人数などで、他大学と比べて特別に秀でている特徴があるチームではありません。だからこそ、その分他大学がやっていない部分に注力したり、相手の弱点を突いたりと、チーム全体の総力を上げられるように戦略を練る必要があります。ブレイクを軸にしたオフェンスとディフェンスの連携強化も、少しずつ成果が見え始めています。さらに、フィジカルの強化も目標としており、専門のトレーナーの方に独自メニューを作成いただき、頻繁にフィードバックを受けながら日々の練習に生かしています。

皆が同じスタートラインで始められるラクロス、練習すればするだけ上達

ラクロスは、高校までの部活動ではまだあまり盛んではなく、大学から始める人が多いスポーツです。部員のほとんどはスタートラインが同じなので、始めるハードルが高くないと感じる人も多いです。そして、ラクロスというスポーツ自体がまだ発展途上であり、戦術も皆で探りながら開発しているところもあります。今後の発展の可能性が大きい点も魅力です。

入部した当初、コーチから「初めの100日で、クロス(ラクロスで使うスティック)を使ってどれだけボールをさわれるかが大切だ」と聞いて「それならやってみよう」と決意し、基本的なパス、キャッチ、キープができるようになるまで真剣に練習に取り組みました。初めて使う道具ということもあり、ボールを扱うのはとても難しかったのですが、コーチがおっしゃった通り、練習すればするだけ上達を実感できました。新しい技術を次々と身に付けられることが楽しくて、自然とラクロスの魅力に引き込まれました。バスケットボールとラクロスでは、フィールドの大きさも違い、屋内と屋外という点でも大きな違いがありますが、動き方や考え方にはたくさんの共通点もあります。オフェンスとディフェンスの関係性や相手との駆け引きなどでは、ラクロスの考え方は私にとってすっと入ってきやすいものでした。今はミッドフィルダーとしてプレーしていますが、1年次にはディフェンスとして試合に出る機会を多くいただき、バスケットボールで身に付けた足の動きが生かされていると感じました。初期に感じた面白さは変わることなく、今も初心を大切に夢中で取り組んでいます。

オン・オフの切り替えや優先順位の工夫で、勉学と部活動を両立

週5日の練習やトレーニングと勉学の両立には常に難しさを感じていますが、優先順位を意識し、空き時間を活用する工夫を続けています。オン・オフの切り替えも意識し、練習や授業にはしっかり集中し、それ以外の移動時間や空きコマでは友人とのおしゃべりなどでリフレッシュする時間を大切にしてきました。忙しさから睡眠時間が不足しがちな時期もありましたが、寝不足は体調やパフォーマンスに直結するため、今は早寝早起きを心がけています。
ただ、大学で学ぶ物理は想像以上に難しく、学科の友人たちに相談して助けてもらいながら理解を深めてきました。物理科学科は女子学生の人数が少ない分、絆もより深まると感じています。

代表チームに参加し初めて海外の選手と対戦。大きな自信をつける

ラクロスは、2028年のロサンゼルス・オリンピックの追加競技として承認され、約120年ぶりの正式競技として復活が決まり、チームの強化にもこれまで以上に力が入れられています。2024年2月、私は代表選手候補として召集され、2025年1月に行われたアジアパシフィック選手権大会に向けて、月に1週末の練習と選手選考に参加しました。その結果、代表メンバーとして出場することができました。部活動とのスケジュール調整が大変でしたが、部員の協力のおかげで、代表の試合にも集中できたと感じています。

海外の選手との対戦は、ほとんど初めての経験でした。相手は体格が大きく、フィジカルが強いうえにスピードもある選手ばかりで、最初は判断力が落ちてミスが増えるなど、思うようなプレーができませんでした。1対1の対峙では「敵わない」という感覚はなかったのですが、突破した後先で他の選手がやってくるスピードが速く、その圧力に戸惑うことが多くありました。初戦の韓国戦でそれに気付けたことで、その後の試合では一つ一つの状況を振り返りながら判断力を高めていき、試合を重ねていきました。決勝戦では、世界四強の一角であるオーストラリアに9対5で勝利、私自身もこの試合で得点できたことは、大きな自信につながりました。現在は、8月に中国・成都で行われる世界選手権に向けて、代表メンバーとして月に2週末の練習に参加しています。スケジュール調整はさらに難しくなっていますが、大学生活との両立を図りながらチームにも貢献できるよう、日々取り組んでいます。

笑顔の絶えない部の仲間たちと。前列中央が織田さん

組織づくりを大切にする中で芽生えた「考える」習慣、自分について話す意識

高校生の頃までは、ただただスポーツが楽しくて、ひたすらバスケットボールに打ち込んでいました。そんな私が、青学のラクロス部に入部したことで大きく意識が変わりました。個人の力だけでなく、チーム全体の総合力を高めて戦うことを重視し、組織づくりにも力を注いでいます。その中で、技術面でも組織面でも「チームが良くなるために自分に何ができるか」を考える場面が自然と増えていきました。今振り返ると、高校生までの私は自分自身やチームのことについて「考える」ということをあまりしてなかったのだと実感しています。

2024年度のリーグ戦では、チームづくりの成果が表れ雰囲気も良く、「このメンバーなら学生日本一も狙える」と期待を持って試合に臨みました。ところが、初戦からの2試合は私がミスの起点になるなど十分に力を発揮できず、勝てたはずの試合を逃しました。悔しさが募る中で、自分の内面としっかり向き合ってこなかったことに気付かされました。特にこの苦しい時期にコーチから「自分の考えや状態を周囲に伝えないことで相互理解が生まれにくくなっていたのではないか」という指摘もあり、自分の気持ちやチームの状況をしっかりと言葉にして伝えることを意識するようになりました。それによって周囲との信頼関係が深まるとともに、プレー面でも安定感が出てきました。今では、ミーティングの場で意見や気持ちを積極的に伝え合い、チームとしての結束力も強まったと感じています。スキルだけでは強くなれない。そう気付けたこの経験は、私にとって大きな成長の機会になりました。

今年度は、私の青学ラクロス部での最後の年です。入部当初からの目標である「学生日本一」を必ず達成したいと思います。これまでに培ってきた自己管理力や優先順位の見極めを活かし、万全の状態で最後のシーズンに臨みます。将来的には、社会人チームでもラクロスを続けながら、代表選手として成長を重ね、オリンピック出場という夢の舞台を目指していきます。

理工学部 物理科学科

青山学院大学の理工学部は数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
物理学はシンプルな根源原理を理解することによって、幅広い科学分野に応用できる学問です。物理科学科では、基礎物理学をはじめ、固体、宇宙、生物といった対象が絞られた分野、さらには超伝導、ナノテクノロジーなどの最先端応用分野まで、さまざまな階層・スケールサイズの物理学をカバーします。充実した設備環境での実験・演習形式の授業により、理解を深め実践力を高めます。

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